修司さんと店を出た時には、すっかり遅くなっていた。
ここからなら会社が近いし、亮平の様子を見に行きたい。
そんなことを考えながらスマホを確認してみると、期待通りというかやっぱりというか、電話もメールも来ていなかった。
「香乃子ちゃん、これからどうする?」
近道になる狭い路地を、修司さんと二人歩いていると、ふとそんなことを聞かれてドキッとする。
まさか、深い意味なんてないよね…?
あるわけないか。
修司さんは今でも、元カノが好きなんだから。
「わたし、会社に戻ります。編集長がまだいるでしょうし、仕事が気になるんで」
もちろん、気になるのは仕事じゃなくて亮平だけど。
この路地を抜ければ大通りだ。
ひとけの無い路地は、修司さんと二人きりだから余計に緊張する。
だから、歩くスピードを速めようとした時、
「待って香乃子ちゃん」
修司さんに腕を掴まれたかと思うと、そのまま引き寄せられ、キスをされたのだった。

