「そんなこと、気にしないでください」
首を横に振り、出された食事に手をつける。
修司さんにそんな過去があって、この場所にそんな思い出があったことが切ない。
「修司さんは後悔してるんですか?別れたこと…」
「してる。情けないだろ?」
「全然です」
ここでも思い切り首を振る。
だって、もしわたしが亮平にフラれたら、とても割り切れないと思うから。
「ありがとう。優しいな、香乃子ちゃんは。実は、ろくに話も出来ないまま別れちゃったんだ。だから今でも、彼女に渡すはずだった婚約指輪を捨てきれないでいるんだけど…。ごめん!やめよう。暗くなっちゃったな」
そう言うと修司さんは、それ以上元カノの話はしなかった。
どんな人なのか気になるけど、興味本位で聞くわけにはいかない。
だからわたしも話を合わせ、とりとめのない会話ばかりをしていたのだった。

