彼氏がいたって、男友達を作ることは悪いことじゃない…はず。
だよね?
いいよね?
「どうしたの香乃子ちゃん?何だか一人でブツブツ言ってるけど」
修司さんに怪訝な顔で覗き込まれ、我に返る。
「すいません。つい考えごとをしていて」
せっかく上品なフレンチの店へ連れてきてもらったというのに、亮平が頭をチラついて、まるで集中出来ない。
ついでに言えば、電話やメールが来ないかも気になっているのだ。
「もしかして、誰か好きな人がいる?」
「え?好きな人ですか?」
いきなり核心を突かれ、戸惑いを隠せない。
そんなわたしに、修司さんは穏やかな笑みを向けた。
「気を遣わないで、話してもいいことなら話して欲しい。実はオレも、好きだった人がいたんだよ」
「好きだった人…?」
何で過去形?
予想もしていないカミングアウトに、修司さんから目を離せない。
「うん。一年前に別れた彼女なんだけど、もうすぐ結婚するんだ。だから、好きだった人。もう、好きでいてはいけない人だから」
「そんな…」
なんて、切ない話なんだろう。
だけどもっと切ないのは、修司さんの寂しそうな笑顔だ。
絶対に無理してる。

