「おはようござ…。あれ?」
誰も来ていない!?
静まり返ったオフィスを見渡す限り、誰もいない。
「誰も来てないよ。さっき、オレが鍵を開けたんだから」
「えっ?そうだったの?」
慌てて時間を確認すると、確かに就業時刻までだいぶ余裕がある。
亮平のマンションから自宅へ早朝に帰ったせいか、時間の感覚がおかしくなっていたみたいだ。
だけど、少し考えれば分かることで、亮平はいつも誰より早く出勤しているのだった。
「亮平って、こんなに早くから頑張ってるんだね。知らなかった…」
その亮平はさっそくパソコンを立ち上げ、何かをチェックしている。
「別に知ってもらいたくて仕事をしているわけじゃないから、構わないよ」
なんて素っ気ない返事。
夜とのギャップが大きすぎて、どっちが本当なのか分からなくなる。
「ねえ、亮平。何か怒ってるんなら教えてよ。こんなモヤモヤしたまま、仕事なんてしたくないんだけど」
思い切って聞いてみると、亮平は眉間にシワを寄せた怖い顔で、わたしの側へやって来た。
「分かってないのか?ゆうべ言ったろ?朝は送るから起こせって。それなのに、勝手に帰ったじゃないか」
「え?まさか、それを怒ってたの?」
気を遣って帰ったつもりが、亮平の怒りを買っていたらしい。
だけど、そんなに怒るなんて、喜んでいいのかな…?

