「あれ?平瀬さん、お昼終わったんですか?」
ボーッと突っ立っていると、給湯室から出てきた早川さんに声をかけられた。
「あ、うん。今帰ったところ」
うわ、ヤバイ。
これじゃあ、まだ給湯室にいる亮平に存在を知られてしまう。
「わたしもなんですよ。さっき、編集長と一緒に帰ってきて…」
「え?もしかして、お昼一緒だったの?」
「そうですよ。じゃあ、わたしは先に行きますね」
ご機嫌な早川さんは、足早にオフィスへ入って行く。
お昼、わたしのことは誘ってくれなかったのに…。
何で、早川さんのことは誘ってるの?
ゆっくり給湯室に入ろうとすると、ちょうど亮平が出てくるところだった。
「あ、あの…」
気軽に声をかけちゃいけない気がして、しどろもどろになる。
そんなわたしを、亮平はこの上ない無愛想な顔で返事をした。
「何?」
「えっと…」
どうして、そんなに冷たいの?
もしかして、ゆうべのことを後悔してる?
「ゆうべのこと、無かったことにしたいなら、それでいいです。それじゃあ」
本当は、そんなことを言いたいんじゃなかった。
だけど、亮平の態度の意味が分からなくて、いたたまれなかったから。
向き合うより先に、逃げちゃった…。

