大股でデスクへ戻った編集長を確認して、弥生は肩をすくめた。

「突然現れるなんて、油断も隙もならない人よね」

「う、うん…」

編集長ってば、わたしまで睨んでいったけど、悪口を言ってないのに。

誤解されてたら嫌だな…。

チラチラとデスクに目をやるも、編集長は会議の準備に夢中だ。

そのうち休憩が終わり、せわしなく皆に声をかけ始めた。

「会議始めるぞー」

それを合図に、編集部は隣室に集まる。

わたしの大好きな時間の一つ、それが会議だ。

せっかく今から会議なんだし、気にするのは後回しにしよう。

わたしの考え過ぎかもしれないし…。

「ほら平瀬、さっさと行くぞ」

モタモタしているわたしの肩を叩きながら、編集長は足早に部屋に向かう。

「は、はい!」

その後ろ姿に遅れをとるまいと、小走りで向かうわたしの心臓がドキドキしていた。

なぜなら、叩かれた肩に温もりが残るから。

編集長の手の感触と温もりに、ドキドキする。