「十分だ。この記事は、どこか特定の場所を紹介するんじゃない。出来るだけ多くの場所を紹介する記事なんだ。分かったら全部載せろ」
そう言い放ち、他の原稿に目を落としている。
何よ、その言い方。
ちょっと酷過ぎない?
圧倒され言い返せないまま、仕方なく原稿をデスクに持ち帰る。
すると、どこから現れたのか、早川さんが側に来ていた。
「平瀬さん、相変わらず素敵ですね。編集長に、あれだけ意見を言うなんてカッコイイ」
「いや、別にカッコイイってほどのものじゃないよ…」
ほとんど私情の塊なんですけど。
それにしても、目を輝かせているあたり、早川さんらしい。
「その原稿、平瀬さんのデスクに置いたのわたしなんです。で、その時たまたま編集長と話をして、編集長はその高台の夜景スポットが好きみたいですよ」
「えっ?そうなの?」
早川さんには言ってるんじゃない!
思わず亮平へ目を向けるも、脇目も振らずに原稿と向きあっている。
ただでさえ募るイライラを、早川さんの一言がMAXにさせたのだった。
「編集長をデートに誘っちゃおうかなぁ。そうだ!平瀬さんも、お兄ちゃんと一緒にダブルデートしません?」

