「編集長」
原稿片手にデスクへ行くと、亮平が愛想の無い顔を向けた。
「平瀬、何だ?」
だいたい、今までの方がまだ愛想があったと思う。
こんなに態度を変えたんじゃ、かえって不自然な気がするけど。
そんな不平不満は胸におさめ、努めて笑顔を浮かべた。
「夜のデートスポットの記事なんですけど、少し振るいにかけたいんです。もし、編集長が恋人とデートに行くなら、どこがいいですか?」
「え?」
ほらほら、動揺して表情が固まってる。
周りから見れば何てことない質問でも、亮平にはリアルに聞こえるに違いない。
素っ気ない態度を取るんだもん。
亮平が悪いのよ。
すると、亮平はわたしを睨みつけるように見たのだった。
それにますますイライラが募る。
彼女に向ける目じゃないよね、それ。
「振るいにかけなくていい。全部載せろ」
そうきたか。
意地でも答えないつもりね。
「だけど編集長。それでは紹介文が、せいぜい二行分くらいしか取れないんですけど。少なくないです?」

