落ち着け。落ち着け。
いかにも平常心を保ってるかのように中庭の扉を開ける。
大きな木に人影がある。
間違いない。五十嵐くんだ。
もう一度、髪を整えて歩き出す。
あたしに気付いた五十嵐くんはふりかえって、あの笑顔を向けてくれた。
「あ、香山さん!」
はじめてよばれた……
緩みそうな口元にきゅっと力を入れる。
「急に呼び出したりしてごめんね。
俺さ、香山さんのことすきになっちゃった。
俺と…付き合ってくれませんか?」
びっくりした。
ってゆーのは表向きだけで、本当は1番まっていた言葉。
「返事は今じゃなくても…「うん!」」
五十嵐くんの言葉をさえぎって返事をした。
「え?」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
もう、緩みまくった口元。
さすがにこれは我慢できないよ。

