悲し笑いの横顔


「で、さっきの答えは?
俺は答えたけど。」

「……別に。ただ、家に帰りたくないなって。」

「ふーん。」
 そっちが聞いてきたくせに、興味なさげに彼はそう言う。

やっぱり答えるんじゃなかったよ、彼は教えてくれたから私も言わなきゃなって無理やり公園いた理由告げたけどさ。


「立ち話もなんだし、座って話さない?」

「はい?」
 彼はあそこ、と東の入り口近くに設置されているベンチを指差した。

「いや、あの…私たち初対面ですよね?」
 そんな座ってまで、話し繰り広げる必要ある?

さっきも言ったけど、私夜遅くにブランコ乗るような女だよ?

「俺は君のこと知ってるから。」
 ほらとばかりに彼は顎をくいっと動かして、先にベンチへ向かった。

私のことを知ってる?
彼の言葉に引っかかった私はしぶしぶ彼についていく。

すとんと距離をちょっと開けて、隣に腰かけた。


 彼は少しレストランの方を気にして、私に顔を合わせてくる。
ブランコのそばにいるときより街灯が近いせいか、彼の顔を先ほどよりもくっきり捉えられた。

……悪い人ではなさそう、目元とか柔らかくて優しそうだし。

「お仕事戻らなくて大丈夫なんですか?」

「あぁ、休憩中だから。」

「そうですか。」
 静かな公園に、私の声が響いた。