悲し笑いの横顔


 視界の隅っこ。
かすかに捉えた姿。

―――くるくるうねっている髪の毛も、遠くからの横顔でも見て取れる優しい目元も、まとっている穏やかな雰囲気もあの夜と同じ…

あ、あ、あの人じゃない!?夜中の公園で、おいしそうな匂いを漂わせてたあのひと!

つまり、

「柊木…さん」

 や、やばいって!やばいって!

途端に私は慌てて商品だなの端っこに身を寄せる。何かの間違いじゃないかと思って、ちらりちらり、何度も視界を動かして彼の後ろ姿を見たりみなかったり。

けどやっぱり彼はそこにいるわけで。

なんでこんな時に、しかもなんでこんな近所のスーパーに……。
家が近いとか?でもううんそういう感じじゃなかったし。だとしたら、あの人が勤めてる職場に近いからなのかもしんないけど…

それにしたって。

私はもう一度彼の後ろ姿をじっと見る。

陳列されているお肉をじっと見ているあたり、買い物を確かにしているようだけれど、籠を提げているわけでもないし、ましてやカートを押しているわけでもない。

え、本当なにしてんの?あのひと。

……やっぱ危ないヤツだったってこと、じゃないよね?

いやいや浮気野郎なんだからある意味危ない人なんだけどさ。

彼はそんな風に頭を巡らしている私に見られているとも気づかずに、陽気な様子でお肉が入ったトレーを右手で掴む。そして、振り返って空いている手でフリフリと誰かに手を振った。


「―――鷹ちゃん。」

 そう、離れたところにいる私にでさえなぜか聞こえた彼の呼び名を呟いて、その人は駆け寄る。

彼女の手元を見て、あぁそっかって私は思った。
彼が籠を持っていなかった理由がわかったから。


「…綺麗な人じゃんか。」
 私と違ってアーモンド色の胸上まで伸びたふわふわな髪も可愛いし、恰好もちゃんと決まってるし…

なんで、浮気してんのよ。

その娘、
一緒に買い物するぐらい、鷹ちゃんって呼ぶぐらい、仲が良いのに。

例え、教えてもらってなくたって分かる。


どう見たって彼女だろうが。