「……え?」

 いま、なんて言った?


「浮気してるから。だからあんまり俺と関わろうとしない方がいいよ。」
 浮気…してる?

ちょっと、待ってよ。うまいこと判断できないんだけど。
誰が浮気してるって?
良い人だなんだって思ったばかりなのに?

それに、さっき―――浮気しちゃだめだよって……

「ごめんね、アヒルちゃん。」
 困惑する私と違ってすらすら言葉をつづる柊木さん。表情だけは複雑そうなまま。

「また、トラウマになっちゃうかな。」
 自嘲ぎみに彼は笑う。涙は流してないはずなのに、泣きわらいみたいな表情だと思った。


「じゃぁ……アヒルちゃん、ばいばい。」
 柊木さんは一方的にまた笑ってそこで踵を返した。
もう俺と話したくないだろってばかりに。


まだ関わるときあるかもよって言ったのはそっちなくせに、というか話しかけてきたのもそっちなくせに。

ズルい人だなぁっておもった。
おとこってのはずるいなぁってまた思った。

私の気持ちに関係なく、勝手に決めて、別れを告げってっちゃうんだもんな。


「お前も浮気してるんかい。」

 って、文句の一つでも言いたいけど、話したばかりの柊木さんの背中を追いかけて、問いただすほどの勇気は私になくて

ただ茫然と公園の東口に出て行く彼の背を見送ることしかできなかった。