「思いっきり泣いた?」
「電車の中でね。」
くすくすっと私は笑う。
「あー、こみ上げてきちゃうときあるよね。」
俺もあったよ、車酔いがひどいときにね…
「それこみあげてきたもの、違うものでしょ」
私はまた笑う。
しかし、まさか全然知らない人に浮気された傷をいやされるとは。
変なめぐりあわせ。
知ってるのは勤務場所と、名前と、歳と。それ以外何も知らなくて、どんな人かもよくわかんないのに。
「また泣きたくなったら泣くんだよ。
アヒルもよくぐわぁ~って鳴いてるし。」
「…つまんないですよ、それ。」
おまけにくだらないジョークで私を笑かせてかせて来る。
「うるさいよ。」
でもまたそう言って、彼は私の頭を軽く撫でる。
話したくなかった自分の話が、言いたくなかった浮気の話が、今じゃ言ってよかったなんて私は思い始めてる。
もしかするとここでこの人に会ったことは必然だったのかな。
神様からの贈り物、だったのかな。
浮気から立ち直るための……もしかして、
次の、恋?
って、まぁそれは最近見たばかりのドラマに影響された冗談話だけれど。


