その日の私たちも、いつもの如く一緒に夕食をとろうとしていた。
付き合って3年を迎えようかという私たちにデートいうデートは珍しくて、
いつからそうなったか分からないが、その代わりに日曜の夜は、どっちかの家で食事を共にする。
専ら最近は私の家―――
つけっぱなしのテレビと、
チャーハンを作っている私から見える彼の背中。
「茜。」
「なに?」
カンカンカン…お玉とフライパンがこすれる。
「ごめん、別れよう。」
パッと私は手元から彼の背に視線を移動させた。
盛ろうとしていたチャーハンが、フライパンからぽろぽろこぼれていることにも気づかずに。
「俺……浮気したんだ。」
「…え?」
そこでようやく、声が出た。
「嘘だよね?冗談でしょ?」
コルクが抜けたシャンパンのように、しゅわーっと言葉が次々と飛び出してくる。
「だって、だって」
私たち30も目の前だし、そろそろ結婚かなって―――…
「ごめん。」
冷たく言い放った彼の言葉は
私の口を閉ざすのに十分だった。