アレから数分後、あたしを抱っこしたままの羽園君と…学校の前。
《早く僕の所へ来て》
あたしはフッと力を宿す。
不思議なことに、皆の視線はあたしたちに移ることはない。
透明になったわけではない。
影を少しなくして…この世のものではない身体になっただけ。
あたしはゆっくりと地面に足をつける。
「…羽園君、ありがとう。助かったわ」
あたしは微笑んでお礼を言う。
「…うん。教室だっけ?」
「そうよ。…『砂時計』に呼ばれてるの」
「…」
静かに俯く羽園君。
「…?早く行きましょう?」
あたしと羽園君は校舎へと足を踏み入れた。
休み時間なのか、廊下には沢山の人。
「…俺、人混み苦手なんだよな…」
弱音を零す羽園君。
「…あたしも好きじゃないわよ」
人混みを見て、吐き気がする。
異人は人混みが大の苦手だったりする。
ヴァンパイアは特別で、なんとも無いらしいけれど…。
あたしは意を決意して、人混みに入り込む。
それに続いて、羽園君も…。
うわ、人に飲まれるわ!
転びそうになった所…、ギュッと抱き寄せてくれた羽園君。
ドキッ
胸がギュッと苦しくなる。
「…あ、ありがとう」
「早く出よう。俺も限界」
そう言って、やっと人混みから抜けると、教室がある。
そのには何時もと変わらないクラスメート。
ちゃんと未来を張り替えるコトが出来たんだ。
その証拠に誰一人騒ぐものも居ない。
「…あ、『砂時計』…っ!?」
「…『砂時計』が…全部落ちてる」
あたしは自分の机の上にあった『砂時計』をつかんだ瞬間!
「嶺雨!」
羽園君があたしを抱きしめた時に…グラリと揺れた地面。
この感覚…前も何処かで…。
あたしはその気持ちの良さに…目を閉じた。