「…失くして正解だよ、嶺雨」
「…え?羽園君何を言っているの?」
「…失くしてくれて良かった」
急に上からポツリポツリと雫が落ちてきた。
あたしが上を見ると…羽園君の目から…涙がポタポタと落ちてくる。
その涙はあたしの顔を濡らす。
「…羽園君?なんでそんなこと言うの?あたしは…今でも後悔してるんだ」
そう。
どうして失くしてしまったんだろう?
「…後悔しないで。あれはこの世から消え去るモノなんだよ」
「…そんなことないよ?あたしを励ましてくれてたんだよ」
あの『砂時計』は、あたしのことを見守ってくれてた。
異世界では、あたしはお姫様だったから…。
友達と居ても、どこか上辺だけで…。
あたしは怖くて、愛想笑いしか出来なかった。
でも…あの『砂時計』だけは違った。
いつもあたしの側に居てくてれ…あたしに笑顔を向けてくれてた。
「…誰から貰ったんだろう?…その人にお礼言いたいわ」
あたしは静かに羽園君を見つめた。
「…」
「…何か知っているんでしょう?教えてくれないかしら?」
あたしは羽園君の目の奥を覗き込むようにする。
すると…焦りの色か、不安の色か…どちらかが顔にあらわになった。
もう…時間だよね?
「…雨雅、今から雨降らすからね?」
もう時間がないよ。
『砂時計』…。
もうすぐて落ち切る気がする。
あたしは力を天空に向ける。
すると手から冷気を発して、天空に向かって伸びて行く…。
あたしも…自由になりたいわ。
すると…ポツンポツンと雨が降り出した。
コレで雨雅とも少しのお別れだ。
雨雅を見ると…気持ち良さそうにしている。

