「…羽園君」
あたしは少し羽園君に寄りかかるようにして…息を整える。
「…あ、俺!嶺雨、ごめん!」
そう言ってサッと離れる羽園君。
えっ?
あたしは寄りかかって居たせいで、前に倒れこむ。
さっきとは違う手がそれを阻止してくれた。
「…う、雨雅?」
「…アンタ、俺の嶺雨に何してくれるんだよ!」
教室は…シーンとなる。
怒鳴った雨雅は、泣きたそうな顔をしている。
「………雨雅?」
雨雅はハッとしてあたしを見る。
その目には、涙が滲んでいる。
「う、雨雅…悪い。また同じコトを」
また同じコトを?
あたしは…だから、この感覚を知って居たのかもしれない。
あたしは…失くした記憶の中に、羽園君とキスした記憶も入っているのかもしれない。
「「きゃーーーー♡嶺雨様と雨雅様の近視相姦(きんしそうかん)よ!」」
「「嶺雨様と雨雅様が、近視相姦!?」」
クラスメートが叫んだお陰で、廊下にいた子も叫び出した。
しまいには、男子たちも…!
「「零沢姉弟が近視相姦!?」」
………………………う、嘘でしょ?
どうしてこうなっちゃったのかしら。
「嶺雨、わ…悪い」
顔を真っ青にして、気分が悪そうな雨雅。
あ、きっと雨に最近あたってないから…。
きっと…!
脱水症状起こしてる!!
あたしの周りには男の子。
雨雅の周りには、女の子が集まり出して…!
「おい!どけてくれ!」
周りを見ると、鼓君や羽園君も囲まれている。
「お、お願い!雨雅の所に行かせて!」
あたしは叫ぶものの、周りの声にかき消されてしまう。
「…嶺雨」
う、雨雅の声!
「…お願いだから退けて頂戴!」
お願い!
雨雅の所に行かせて!
「…お願いだから退けて、……っ」
雨雅が死んじゃう!
嫌だよ…!
コレ以上…あたしを孤独にしないで!

