「…お前、マジで嶺雨に近づくな」
雨雅はあたしの左隣を歩いているイケメンに敵意を剥き出しにしている。
「それはできない。嶺雨にしか解決出来ないんだ」
深刻そうな顔をするイケメン。
あたしは右隣を歩く雨雅を見ると、不安げに揺れる瞳。
あたしはこの瞳を誰よりも近くで…視てきた。
取られそうで怖いんだ。
「…雨雅は、あたしから離れては駄目よ」
あたしは優しく雨雅の頭を撫でた。
「…ん」
そっぽを向いて恥ずかしそうに頬を掻く雨雅。
これが照れ隠しなのも分かっている。
「…ココがあたしと雨雅の家よ」
馬鹿でかい家を見上げて、太陽の眩しさに目を細める。
「……変わらないな」
「…………アンタ、ココ来るの初めてじゃないのか?」
「………まぁ。初めてじゃない」
「…入りましょう?」
あたしは寂しさ感じる家に足を踏み入れる。
『雨氷』の為に少し、涼しい造りになっている。
あたしはすぐにヴァンパイアである鼓君に毛布を渡す。
ヴァンパイアは、大の寒がり。
だから、冬は家であったかく過ごすのが当たり前。
逆に『雨氷』は、夏が苦手だから家から出ちゃいけない。
でも、学校を休むわけにはいかないため…仕方なしに行っている。
「…羽園 歩風(はねぞの ほかぜ)」
イケメンは急に呟いた。
「…羽園って、何処かで聞いた名前だな」
雨雅は客間のソファーに座りながら、言う。
「…羽園ってことは『天使』かしら?でも歩風って『疾風』なの?」
「…俺は純血だからハーフじゃない。どれに当てはまるかは、俺の口からは言えないんだ」
ハーフじゃないってことは…『天使』か『疾風』よね?
「『天使』は地球には来れないはずだが…」
鼓君は雨雅の正面のソファーに座る。
「…『天使』は、天界(てんかい)で門払い(もんばらい)の仕事があるものね」
天界とは、人間が天国と言う所が天界。
極楽とか言ってるけど、ごく普通の生活と同じ。
日常生活のことは自分たちでやるしかないし…。
逆に地獄と人間が言う所が、魔界(まかい)と言う。
そこでもまぁごく普通。
でも働かされるから大変らしい。
そして、『天使』は、天界で門の番人をしている。
門で、この人は天界・魔界のどちらかを決める所。
言わば、関所のようなもの。