今日は7月の頭。
鬱陶しいくらいにまとわりつく熱風。
あたしはその中を淡々と歩く。
少し『雨氷』にとっては、夏は苦手だけど『火陽』にとっては大好きな季節。
「…ハーフだと微妙だな」
汗を手で拭いながら、前を睨みつける。
なんでこんなに暑いのかしら…。
ヴァンパイアの鼓君は、冬が寒くてしょうがないらしい。
あたしはどちらかと言うと、冬が好き。
ハーフでも、『雨氷』の血が多めに流れてるからか、夏が本当に暑くて…。
「…零沢さん?」
学校に雨雅と向かっていると、誰かに話しかけられた。
誰よ。
あたしは早くクーラーの下に行きたいのに…!
あたしは睨みつけたいのをグッと我慢して、微笑を貼り付けて振り返った。
そこには、茶色の瞳に、真っ黒な黒髮。
背は高く、見上げるのが辛い。
顔は随分と整っているけど…。
「…どうかされました?」
「…アンタ、誰」
雨雅は牙剥き出しで、イケメンを睨みつける。
「…君は零沢の弟かな?」
「そうだけど。嶺雨に何か用があんのかよ」
イケメンはあたしと同じ様に微笑を浮かべる。
「…『異人』、何だろ?」
「…へぇ。アンタ殺されてぇの?」
眉間に皺を寄せている雨雅。
「…そんなことないさ。俺も『異人』だからね」
そう言って、微笑をなくして行く。
その下には、悲しみに暮れた疲れ切った顔があった。
「……違うんだ。助けて欲しい」
あたしは、この人には辛い過去があることがわかった。
あたしの髪の色が変わる。
「……取り敢えず、家に戻りましょう」
あたしと雨雅、それからイケメン。
そして、鼓君も電話で呼び出した。
真っ赤な太陽に負けないくらいの。
ピンク色の髪が。