夏の暑い、とても暑い日だった気がする。
気がする...というのも、月日が経つのは早いもので、もうよく思い出せない。いや、思い出せない、というのは少し言い過ぎた。
今でも、「あの光景」が私の頭を駆け巡る。
好きだった、君が消えてしまう、あの光景が。下り坂。暑いね。と言いながら、ブレーキもかけずに、坂を下っていた君。
「危ないよ」と私が慣れたように言う。
「大丈夫、大丈夫!」とケラケラと笑いながら、君は学校への道を自転車でかけ降りた。相変わらず、せっかちだなぁ。と思っていたら、信号無視のトラックに、君がはねられた。
瞬時に、真っ赤なものが、私にも見えた。
声も出なかった。私はただ、自転車を停めて、信号の道を覗いた。
さっきまでの彼の顔はもう無かった。ただあるのは、変形した自転車と真っ赤に染まった肉片とトラックだけだった。
ただ、私は立ち尽くして暑い日差しのなかに焼かれていた。日焼けとか、そんな日常茶飯事なことも忘れてしまっていた。
ぼぉっと、炎のように立っていたら、救急車が来て、肉片は運ばれていった。
...即死だった。