アイツ限定




「…少しはやるじゃねぇか。」



そういって、村上は、ボールをついて、センターサークルへとゆっくりと移動する。

あたしも、汗をTシャツでぬぐって、村上の背中を追う。


…あれ…こいつ、汗かいてない…。

あんな激しく動いていたはずなのに。


もしかしてこいつ…。



「…本気出してねぇだろ。」



あたしはキっと村上を睨む。

センターサークルで再び向き合ったあたしと村上。



「そうだな…手抜かないって言ったわけだから、本気出さないとお前に失礼だな。…弱音吐くんじゃねぇぞ。」



そういって、村上はダムダムと右手でドリブルをする。


全国1のT中元バスケ部が今あたしの目の前にいる。

全国のレベル。


見せてもらおうじゃん。



村上はキュッと体制を低くして、ドリブルの素早くする。


そして、素早く左へと抜けようとするのがわかった。



抜かれてるもんか。

そう思って、移動したときにはもう遅かった。


村上は、素早くあたしを抜き、ゴールに迫る。


あたしは、めげずに、追いつこうとするけど、何もかもが素早い。


そして、村上は、力強く体育館を蹴って、綺麗なダンクシュートを決めた。