アイツ限定



センターサークルに着いたあたしと村上。

チャイムが鳴るまであと30分。

インターバルなしで、あたしたちは今から30分間走り続ける。



「ほらよ。」



そういって、村上はあたしにボールを投げてきた。



「お前から攻めろ。言っておくけど、手、抜く気はさらさらないから。」



そういって、村上は余裕そうにあたしの前に立ちふさがる。



「あたしも遠慮なんてしない。女だと思ってなめてかかるなよ。」



そういって、あたしは自分の左でダムダムとドリブルをついた。

そう、あたしはバスケにおいてはサウスポー。

Y中にはサウスポーは1人もいなかった。

どうしても皆にはない、特別な武器がほしかった。

兄貴たちに相談したところ、サウスポーを提案されたあたし。

スポーツにおいての左は、かなりの武器になるって兄貴たちが教えてくれた。

それからというもの、あたしは黙々と、左の練習を始めた。

中学生にもなると、左への転換は難しいのが現状。

だけど、あたしは諦めたくなかった。

絶対にスタメンに入るんだ。

だから、練習終わりにずっと公園で自主練をしてた。

そこで、雅人と出会い、1対1でバスケを1から学んだ。

半年という短期間で左手をものにしたあたし。

それが評価され、徐々に試合へ出る回数も増えた。


今も、あたしのこの左手は、衰えてはいない。

まだ、身に染みて覚えている。

大丈夫、行けるっ!