アイツ限定
























「…おい、松木。」



教室に入って、席に着いた途端、先に座っていた村上に話しかけられるあたし。

村上はこちらの方に体を向けてくる。

だけど、あたしは向かい合うことなんてできなくて、前を向いたままカバンの中の教科書を机の中にしまう。


まだ、胸はもやもやして気持ち悪い。

もう、吐きたいくらいにもやもやする。


こんな気持ちになりたくはないのに。



「何?」



あたしは、手をせわしなく動かしながら愛想のない返事を返す。


これじゃあ、新クラスになったときと全く変わらない受け答え。


だけど、あたしにとってはこれが精一杯。


これ以上愛想なんてついていられない。


悪い方ばかりに考えてしまう。

村上は実はあたしのことなんて、好きじゃないんじゃないか。

雅人みたいにまた、あたしは捨てられるんじゃないか。

やっぱり、汚れた女は嫌だと思ったんじゃないか。