村上はあたしの手を引いて、屋上へと続く階段をのぼる。
その背中は、あのころとは比べ物にならないくらいに大きくなって、男の背中そのものだった。
いつもなら、恐怖で震えて仕方ないはずなんだけど、なんでだろう。
村上の背中はなんだか何もかもを守ってくれそうな…そんな気がした。
屋上への出入りをこの学校は禁止ている。
だけど、ただ”立ち入り禁止”とだけドアに紙が貼っているだけで、鍵などはかかっていない。
行こうと思えば簡単に屋上に行くことができた。
村上はその紙を気にすることなく、そのドアに手をかける。
__キィー…
普段あけられていないせいで、金属の古びた音が少し聞こえた。
そして、村上は躊躇なく、そのドアをくぐり、あたしもそれに続いた。
そこは…絶景だった。
この学校は海の近くにあって山もある。
結構田舎なところにあるこの高校。
普段の見慣れた景色がそこにあるはずなのに、この上から見る風景はまた違う姿をあたしに教えてくれた。
「綺麗だろ?」
村上が隣で自慢げに言ってくるのが聞こえた。
真っ青な青空と、真っ青な海が一体化している。
水平線がはっきりと見える。
青がこんなにも私の目に綺麗にうつったのは初めてのことだった。


