アイツ限定




「不器用な人なんだろ。あんたの親父さん。素直になれなかっただけなんだろ。」



「…お前ってさ、何でも真っ直ぐだよな。」



そういって、村上は傍の階段の3段目に長い足を広げて前のめりで座る。



「お前もこいよ、立っててつかれるだろ?」



そういって、隣をポンポンと左手で叩く。



「…む、無理だよ。そんな隣とか…」



「あ、じゃあ、俺の前が良かった?」



そういって、村上があたしをからかっている。

完璧にこいつ楽しんでる。



「ふ、ふざけるなっ!あたしは座らないっ!」



そういうと、村上は少し、口角をあげて微笑んだように思えた。



「…え…村上今…笑った…?」



「は?…んなはずねぇじゃん。



なぁ、今から屋上いかね?まだ授業終わるまで時間あるし。」



そういって、村上はゆっくりと立ち上がった。


そして、あたしに手を差し出してきて、あたしはそれに手を重ねた。

大きくてごつごつした手。

だけど、鳥肌なんて立たなかった。

心が何だかあったかくなった。

なんだか…この手には安心できた。