アイツ限定



村上の顔は少し怒っているように思えた。



「あのな…過去は過去。今は今だろ?何引きずってんだよ。一番過去にこだわっているのは、俺じゃなくて、お前じゃねぇか。

あと、男男ってひとくくりにすんなよ。こっちからすればたまったもんじゃない。

言えよ、俺が好きだって。」



昔秘めていた思いが少しずつ少しずつ溢れ出すのかわかる。


あの日の時みたいに、心臓がキュッとなる。


あの男の子があたしの前から消えた日、心臓がズッキッと痛くなったあの痛さとはちがう。


甘くて…苦しくて…ドキドキと胸が高鳴る。



きっとあたしの初恋はあの男の子だったんだと思う。



だけど、雅人と出会って、雅人に恋して…突き放された。


1度突き放されたくらいで…あたしはこんなにも臆病になってしまった。

人を好きになることに。

だからきっと、あたしは昔の苦しい思い出を理由にして男を避けて、恋をすることから逃げていたのかもしれない。

明日香の言った通りなのかもしれない。

本当のことを言われたから、あたしはきっとカッとなったんだ。



また、あたしは逃げるのか…


あたしの初恋の相手から…そして多分今も…あたしはきっとこいつに惹かれている。



「…っ…あたし…村上を信じてもいい…の?」



もう一度信じてみようか。

もう一度向き合ってみようか。