信じたくなかったけど、信じざるおえなくなった。
身長はあたしよりも大きくなって、あたしよりも力がある。
あのころのは全く違う。
あの可愛い笑顔はどこにもない。
目の前に立つのは、笑顔を忘れた男。
あたしの嫌いな…もう信用しないと誓った…男。
だけど…
「約束…覚えてたわけ?」
あたしがぽつっと小さな声でそうつぶやいた。
「ああ、覚えてた。覚えてなかったらこんな高校きてねぇし。
…俺さ…一目ぼれだったんだ、お前に。あのガキの時にな。
だから、引っ越してからも俺、バスケ頑張って頑張ってお前がバスケしていること信じてお前を探した。で、見つけたと思ったら、お前が極度の男嫌いだって噂で聞いて、今は近づかないでおこうと思った。
そんなことしているうちに、いつの間にか俺は笑うことを忘れ、感情さえなくなっていくように思えた。
だけど、お前がこの高校受けるって噂で聞いて、受けようと思った。もう一度、あの子と話してみたいと思った。
あの日の約束を果たそうと思った。」
あの日のあたしに一目ぼれか…
だけど、あたしはあのころのあたしとは違う。
村上をあんなに素直に受け入れることは今のあたしには不可能。
そして、きっとこいつにも裏があるはず。
きっとあたしは裏切られる。
「…そう。でも、雅人からあたしの過去を聞いて、あんたは引いた。ちがう?こんな汚れた女だったんだって、幻滅したんでしょ?」
きっとこいつも、雅人みたいにあたしから逃げるはず。
どうせ、突き放されるなら、あたしから突き放してやる。


