こいつがあの男の子?
全く笑わないこいつが?
ありえない。
「…ありえない。」
あたしは冷たくそう言い放つ。
「は?」
「だって、あの男の子は、笑ってた。だけど、あんたは笑わない。だからちがうっ!」
「…っ…あのころは、まだ笑うことができたんだよ。今は…笑うことすらできなくなっちまった。
笑わないんじゃない。笑えないんだ。」
笑わないんじゃない…笑えない?
どういうこと…?
意味がわからない。
「あの日言っただろ?親父が、バスケする最中は俺に笑うなって言ってくるって。」
確かに言ってた。
__父さん…俺に笑うなって言うんだ。バスケは遊びじゃない、真剣にやれって…
あの日の男の子の言葉が脳裏に思い浮かぶ。
「それが、だんだんひどくなって、俺は家の中でも笑うことを禁じられた。
中学のバスケの監督、コーチはみんな俺の親父の言いなりだった。全然バスケが楽しくなかった。
…そしていつの間にか、笑うことを忘れていた。
…笑えなくなったんだ。」
こいつの言っていることは本当で、あの男の子はこいつ。


