そして、見事に男の子はレイアップを綺麗に決めてしまう。
そんなことをもう30分以上はしていたと思う。
お互い疲れて、あたしは近くにあった自販機で2つのオレンジジュースを買って1つをその男の子に渡す。
2人でベンチに座って、しばらく、無言で沈みゆく真っ赤な太陽を眺めていた。
「君は…なんでバスケしてるの?」
あたしよりも小さな男の子に私は問う。
男の子は、オレンジジュースを一口飲んでから、「いつの間にか、気づいたときには生活の中にバスケがあったんだ」なんてカッコいいことを言ってきた。
「バスケは…好きなの?」
「わかんない。失敗したら父さんに怒られるし、ファインプレーしても、決して褒めてはくれない。
父さん…俺に笑うなって言うんだ。バスケは遊びじゃない、真剣にやれって…
でも、俺は感情を押し殺すバスケは嫌い。楽しくないもん。
だけど、こうやって1人でするバスケは好き。
バスケを1人でしていると、なんかね、悪いこととか考えなくてすむんだ。
シュートを打つ瞬間とか、バスケのことだけしか考えられなくなるから、俺はシュート練習が一番好きなんだ。
だけどやぱり…信頼できる仲間といつかバスケを心から楽しめたらなって思ってる。」
「…信頼できる…仲間?」
「だって、1人でやったって、パスとか出す相手いないと、やっぱり張り合いがないからな…。」
そういって、男の子は夕日に向かって微笑んでいるのが見えた。
「…バスケしてたら…バスケだけしか考えなくて済むの?」
あたしが下を向いてそう尋ねると、男の子は少しあたしの様子を変に思ったのか少し言葉が詰まったように思えた。


