すると、さっきまでのマリの固い顔が、一気にほころびて、ぎこちなかったけど少しだけ笑ってくれた。
「…すごい。」
マリはぽつっとそんなことを言ったんだ。
K高という、県内トップの強豪校でバスケをしていた俺は、こんなのは朝飯前だったんだけど、マリにとってはすごい技に思えたらしい。
そこからだった。
俺とマリが打ち解けてきたのは。
マリは、それからも毎日毎日その公園でバスケをしていた。
そして、俺が来たのがわかると、マリはニコッと笑って、「バスケ教えて」って言ってきた。
俺はそれが楽しみで、毎日のきつい練習も今まで以上に頑張ることができていた。
バスケの指導をしながらマリからはいろんなことを聞いた。
Y中に通っているということ。
中学からバスケを始めたこと。
皆にはない武器を手にいれるために、サウスポーの練習をしているということ。
兄が2人いること。
母親がいないこと。
学年で成績がトップだってこと。
男嫌いだってこと。
マリはいつも言ってた。
「絶対にスタメンに入って、県1位とるっ!」って。
Y中の女バスはバスケの強豪校。
幼いころからバスケをしていなければ、その練習についていけるとは思えない。
だから、マリは周りから遅れている分、こうやって、1人練習して、皆に劣らないように、サウスポーの練習までしているんだと思う。
マリと出会って1か月が過ぎようとしたとき、はじめ、フリースローが10本中5本入るかどうかだったのが、10本中10本入るようになり、マリは確実にバスケの腕をあげていった。
その後はシュート練習だけではなくフォワードの練習だとか、フェイクの練習だとかいろんな練習をした。