天宮真帆は闇の中にいた。


深い、深淵の闇の中に、胎児のように浮かんでいる。



「わたし、どうなるのかな？」


フワフワした感覚の中、真帆は自らの死を理解していない。



ただ、急激な睡魔に襲われ、真帆は更に深く沈んでいく。



（パパ、ママはどこ？ なんかねむいや……）




「寝たら一生、パパやママに会えませんよ」


沈んでいく中、真帆の意識が消えかける瞬間に低い男性の声が真帆の意識を呼び起こす。



「だれ？」



真帆は起き上がり、辺りを見回した。



「此処ですよ」



真帆は後ろを振り返ると、声の主はそこに立っていた。



物腰が優しそうな男性がそこに立ち、真帆を見ている。


整った顔立ち、ツヤツヤした黒い髪、どれも女性が羨むようなモノを持った男性。

しかし、瞳は人ではあり得ない鈍色に輝く瞳に真帆はそこばかりに目がいく。



男性はそんな真帆の目線を合わせるように膝を着き、目を合わせる。



「貴方は死ぬんですよ」



「し、ぬ…？」



「えぇ、そうです。【死】です。
貴方は、わずか5歳という年齢で寂しく死に、パパやママを悲しませ、もう二度会えなくなる。それが【死】です」




「いやだよ…パパとママのところに帰る…！」


怯える真帆は逃げようとするが、男性に簡単に周りこむ。



「無駄ですよ。貴方は死ぬのですよ」



男性が指を鳴らすと、真帆の頭の中に先ほどの母親の泣き喚く声が聞こえてくる。



「いや、いや……やだよぅ…やめてよ‼︎…生きたいよ」


泣きじゃくる真帆は耳を塞ぎ、その場に座り込む。


ボソッと、囁いた言葉を男性は聞き逃さなかった。
いや、むしろ、その言葉を待ち望んていたように、ニヤリと口角を上げる。



「じゃあ、私と契約しますか？」