天宮真帆、5歳の時に当然、原因不明の高熱を発し、病院へ運ばれた。



「先生っ! 真帆は!」


天宮真帆の母親、天宮 百合 【あまみや ゆり】は医者に詰め寄る。


愛娘は集中治療室に運ばれていて、気が気ではない。



「お母さん…聞いてください、正直…今夜が峠でしょう」



医者の言葉に百合は絶望する。



「イヤッ!なんとかしてください!
真帆はまだ…まだ、5歳なんですよ‼︎」



医者は顔を下げたまま、黙る。


「なんとか言ってくださいっ! ねぇ、先生!」


先生の服を掴み、揺さぶる百合の肩を男の手が掴む。


「清一郎さん…」


「…………」


ギュッ

真帆の父親であり、百合の夫である天宮 清一郎【あまみや せいいちろう】は百合を静かに抱きしめる。



「せい、清一郎さぁん……真帆、真帆がぁ…」



「…………………」


百合は清一郎の腕の中で静かに泣きじゃくる。



清一郎は何も言わず、ただ百合を抱きしめる。