「昨日テレビでねー…」 「マジー?」 「見たかったなー」 下から誰かが来る。その声はだんだんと近づいてくる。たくさんの笑い声が、次第に大きな笑い声となって私の耳に届く。 そんな声を聞きながら、私は止まっていた足を前へと進める。足で、見えない段差を確かめながら。 そして、その声とすれ違うところに差し掛かった時――――――… 「わっ」 そっちに気を取られていたせいで、段差を踏み外してしまい、体がぐらりと揺れた。