君と夢見るエクスプレス


「え、ああ、知ってるよ。松浦さんの歓迎会の時に聞いたから」
「あ……、私が言いました?」
「うん、質問コーナーで。他にも、嫌いな食べ物は貝類だったよね?」
「そうです、よく覚えてますね」
「ああ、よく覚えてるよ、忘れるわけないだろう」
「すみません、私が忘れてました」



そうだ、忘れていたのは私。



企画開発室に異動した私の歓迎会を開いてくれた時、自己紹介の後の質問コーナーで投げ掛けられた質問の数々。出身地から始まり、好きな食べ物や嫌いな食べ物、それに好きな俳優などなど。



食べながら飲みながらのゆっくりペースで繰り出される質問は、やがて『そんなこと知りたいの?』 と思うような内容に発展していた。



本意じゃない部署への配属で自棄になっていた私は、ハイペースで飲んでいたから忘れてしまっていたけれど。



なんだ、自分で言ってたんじゃない。



「だって松浦さん、あの時よく飲んでたからね」



姫野さんが、さらに追い打ちをかける。
まったく、自爆するなんて情けない。しかも余計なことまで思い出させるなんて。