君と夢見るエクスプレス


「じゃあ、今日も頑張ろうね」



美波が笑顔で手を振って、エレベーターを降りていく。



「うん、後でね」



笑って返した言葉がエレベーターの扉で遮られて、私はふうと小さく息を吐いた。



入社四年目の私たち。私は二十五歳、先に誕生日を迎えた美波は二十六歳になった。ジョブローテーションで新たな配属先で働き始めたけれど、納得できる仕事ではなく苦戦の連続。



美波は入社時からの希望だった広報課への配属となり、毎日が楽しくて生き生きしているけれど私は違う。入社時は施設管理課、ローテーションで企画開発室への異動となった。



八階建ての本社ビル。広報課は二階、企画開発室は四階にある。



事務所入り口のガラス扉を開くと、阪井(さかい)室長と笠子(かさご)主任が慌ただしくやって来た。



「おはようございます」
「おはよう、松浦さん、今日の朝礼は少し遅れるから。皆にも言っておいて」



すれ違いざま、阪井室長は早口で言って事務所を出て行く。笠子主任は軽く頭を下げただけ。急ぎ足で二人が向かったのは会議室。特急か何かの会議でも入ったのだろうか。