君と夢見るエクスプレス


ということは、姫野さんに一部始終見られていたということだ。



私が外国人に絡まれて、おろおろしていたところも。橘さんが、助けに入ってくれたところも。



外国人に対応できなかった自分の不甲斐なさと情けない気持ちが蘇る。ますます恥ずかしくて情けなくて、穴があったら入りたくなってきた。



だけど同時に、助けてくれた橘さんの姿までもが鮮明に蘇ってくる。



まったく動じることも怖じることもなく、対応してくれた凛とした姿。



最初の印象からして何だか気に入らない人だと思っていたのに、どうして脳裏に浮かぶ彼の姿はきらきらと輝いているんだろう。



「いや、彼が松浦さんに触るのが見えたから……、何か変なこと言われたんじゃないかと思って、気になってたんだ」



姫野さんの遠慮がちな口調が、私の脳裏から橘さんの姿を消したのは一瞬だけ。
また、すぐに橘さんの姿が浮かんでくる。



駅員室の前で、私の背中に触れた橘さんの手の感触。



『待ってみようと思ったんだ、松浦さんが振り向いてくれるのを』
と優しい目をして言った橘さん。