あっという間に空になったお皿を積み上げて、幸せな気分。海老を食べ尽くしたという達成感に浸って、仕事のことを忘れそうになる。
いつの間にか姫野さんが箸を置いて、じっと私を見つめている。
「松浦さんは、本当に美味しそうに食べるね」
「そうですか? 食べるのが特技ですから」
「そんなことないだろ、仕事だって、来た頃よりもずいぶん手際が良くなってる」
「ありがとうございます」
そんな言い方をされると恥ずかしい。
とりあえず箸を置いて、お茶を啜って照れ隠し。
だけど、やっぱり。
自分はこのまま企画開発室で過ごすことになるのか、と思い知らされて寂しくもある。
笑顔を見せていた姫野さんが、ふと表情を強張らせる。何か言いたそうに唇を噛んでいると思っていたら、しばらくして口を開いた。
「ところで、さっき……、橘君に何か言われてなかった?」
「え? さっき、ですか? とくに何にも言われてないですけど……」
まさか姫野さんに見られていたとは思わなかった。ずっと電話に夢中だと思っていたのに。

