君と夢見るエクスプレス


瞬きするのを忘れたみたいに、一点を見つめたまま。姫野さんらしくない強張った表情には、僅かな戸惑いが滲んでいる。



そういえば昨日も、同じような顔を見たような気がする。



「姫野さん? どうしたんですか?」
「あ、いや……、海老ばかり五皿も注文したんだけどよかったのかな? と思ったんだけど、食べられる?」



いつもの姫野さんとは明らかに違う、ぎこちがなくて歯切れの悪い返事。絶対に姫野さんらしくない。



だけど原因が分からなくて、せめて姫野さんに不快な思いをさせないようにと笑って答えた。



「大丈夫です、海老なら、ぺろっと食べられますから」
「そう、よかった」



安心したように笑って返してくれるけど、ちょっと不自然な感じ。



そう思っていたのも注文した品が届くまで。大好きな海老の載った皿を目の前に、姫野さんのことをすっかり忘れた私は食べる方に夢中になっていた。



面倒だと思っていた外回りも、こうやって好きな物を食べられるご褒美があるから頑張れるんだ。