これを、蛇に睨まれた蛙というのだろう。
どうして店内に居るのよ?
怒りに近い疑問が胸で渦巻いてる。
そもそも、どうして私が怖がらなきゃいけないの?
「陽香里? どうしたの?」
異変に気づいた美波が、ゆっくりと振り返る。
すると彼は素早く陳列棚へと向き直り、雑誌へと手を伸ばした。澄ました顔で、何事もなかったかのように。
当然、美波は彼に気づくはずはない。
「ねえ、何言おうとしたの?」
再び問い掛けられて、私は首を横に振った。
「ううん、ごめん……、何を言おうとしたのか忘れちゃった」
「何よ、それ。今日のお昼はどうする? 外に出る? お弁当にする?」
「うん、お弁当にしようよ。今日の献立はエビフライだったから」
「オッケー、わかった」
何にも知らずに笑う美波の後ろで、彼は私に鋭い眼光を突き立てたまま。
『絶対に話すな』と目が語っている。
いや、脅しているのは明らかだった。

