「ここからでも臨海地区に行くバスは出ているのに、どうしてですか?」
「周りに何にもないだろ? 駅前にファストフード店はあるが、コンビニや飲食店は駅の北側に集中してる」



ホテルの隣りに続く緑色のフェンスの向こう側には、広大な更地。



かつて球場のあった場所には、見渡す限り草が生い茂っている。地面が見えないほど茂った草むらの中、あちこちから鳥たちの遊ぶ声が聴こえてくる。



きっと鳥たちにとっては、餌の宝庫になっているんだろう。
動物たちの楽園だ。
とても駅前とは思えない。



このまま、ここにビオトープを作ってしまってもいいんじゃないかとさえ思えてしまう。
そうだ。私たちのプロジェクトは、駅前のビオトープということで完了。



「このホテルに泊まるのは寝るためだけ、ですね」
「そうだな、泊りの出張で食事する場所を探すのは面倒だ、できるだけ近くに店があった方が助かるだろ?」
「はい、夜はホテルの食事よりも外で済ませることが多いですね」



それ以上言わないけど、ホテルのレストランは値段が高い。ハイクラスのホテルなら、尚更に。