君と夢見るエクスプレス


「よかったら、中で待ってなよ。こんな所で立ちっぱなしで居るから目に付くんだ」



ひらりと手を添えて、橘さんが駅員室へと誘う。口調の強さに反して、まるで自分の家に案内するかのような自然な動き。



「私、そんなに目立ってました?」



つい誘われて、尋ねてしまった。
そんなこと、言うつもりはなかったのに。



すぐに口を噤んだけど、時すでに遅し。微笑む彼はしたり顔。



「うん、目立ってた。案内係みたいに見えた」
「案内係?」
「そう、ツアーのガイドさん的な雰囲気がぷんぷんしてたよ、いい具合にね」



嬉しそうに話す彼に反して、私はどんどん悲しく落ち込んでいくばかり。外国人に対応できなかった自分の不甲斐なさと、どうして捕まってしまったんだろうという不運さがうずうず。



わかってたのなら、どうして……と。



「だったら……」
「どうして、もっと早く声を掛けてくれなかったの? って言いたいんだろ?」



言いかけた言葉を遮った橘さんは、自信に満ちた笑み。



よくぞ言い当てたと、私が言うとでも思ったか。と言いたいところだけど、当たっているから何も言い返すこともできない。