君と夢見るエクスプレス


やたら橘さんが、きらきらと輝いて見える。悔しいほど、憎らしいほど、生き生きとしてる。



そういえば、大学卒業後すぐに留学したとか言ってた。留学した経験が、こんな時に役立っているというわけか。



やがて外国人たちは満足そうな笑顔とともに、彼に何かを告げて去っていく。キャリーケースを引き摺りながら。



彼らが改札口を抜けていく。姿が見えなくなった頃、ようやく橘さんが私を振り向いた。



「霞港に行きたかったらしい、クルージングするんだって、いいよなあ……」



橘さんの声には、本気で羨ましい気持ちが溢れてる。



そんなことを彼らと話していたんだ……と思うと同時に、『会話もできないのか』とか言われるんじゃないかと知らず知らず身構えてしまう。



だけど、彼は何にも言わない。
制帽を脱いで髪をかき上げて、ふわっと笑う。



「今日は、何しに来たの? よかったら、俺も手伝おうか?」



再び制帽を被り直す仕草、何事もなかったような笑顔が眩しい。弾むような声に、何と言い返せばいいのかわからなくなってくる。