君と夢見るエクスプレス


もう、振り向けない。
視界の端っこには、彼の影。



どうでもいいから、お願いだから早くどこかに消えてよ!



祈る胸中で、鼓動がどんどん速くなっていく。



ようやく視界の端から彼の姿が消えた頃、入れ替わるように駆けてきたのは同期の御坊美波(ごぼうみなみ)。



ほっとする私に手を振りながらも怪訝な顔。



「おはよう、陽香里(ひかり)。何笑ってんの? 気持ち悪いよ?」



店内へと入ってきた美波の第一声。



笑いを押し殺したつもりだったけど、美波には笑っているように見えたのか。それとも本当に我慢できず、顔に出てしまっていたのかわからない。



だけど、さっき見た事を一刻も早く話さずにいられようか。
笑いを堪え切れずに口元が緩んでいく。



「おはよう、笑ってないって。ちょっと聞いて……」



言い掛けて、震える声を呑み込んだ。



美波の二、三歩後ろには、見覚えのある男性。きっと鋭い眼光が私に突き立てられる。



さっきの車内で女子高生たちを睨んでいた時よりも、さらに鋭さを増して。今にも私を貫こうとしている。