君と夢見るエクスプレス


朝礼を終えて、メールと書類の整理から徐々に仕事に取りかかる。



姫野さんから外出は『午後から』と聞いたから、午前中はゆったりと過ごせそう。出社前にコンビニで買ったグミを摘みながら、外出時に持って出る書類を準備したり。茜口駅前のデータを見直したり。



すると、慌ただしく事務所を駆け抜けていく足音と声。



顔を上げると、他のプロジェクトに関わっている芹沢主任が、事務所を出て行こうとしている。分厚いキングファイルを抱えて、携帯電話で大きな声で話しながら。



聴くつもりはないのに、嫌でも話している内容が聴こえてくる。



「ちょっと、困るだろ。どうして確認しなかったんだ?」



芹沢主任は元々の声が大きいから怒っているように聴こえるけれど、顔は思いきり笑っている。本気で怒ってるのではなく、冗談半分で話せる相手だとわかるのだけど。



それでも自分に言われてるみたいで、自分が怒られているみたいに思えて、ドキドキしてしまう。



もう、ずいぶん聞き慣れたはずなのに。



隣りに座っている姫野さんが苦笑い。気にするなと目配せしてくれる。