改札口を出たら、さほど広くない駅のコンコース。数台の自販機と鉄道会社のポスターが並んだ壁と、フリーマガジンラックが置かれた柱をすり抜けて歩く。
コンコースを出て、すぐ左手にあるコンビニを目指して。
私の職場はすぐ目の前。宮代駅南口を出た正面にあるビルが、私の勤める港陽鉄道の本社だ。
市の北側を走るJRに対して、南側の港に近い地域を東西50キロメートル運行している。地元密着型の私鉄会社と職場では皆が言うけれど、本当に密着しているのかは謎かも。
出社前に駅前のコンビニで、お菓子と飲み物を買うのが私の日課になっている。
それに、そろそろテレビ雑誌の発売日だし。陳列棚に並んだ雑誌を見渡して、見慣れた表紙のロゴへと手を伸ばす。
すると陳列棚の向こうのガラス越しを通り過ぎていく男性。背が高くて鼻筋の通った横顔は、さっき電車の中で恥を掻いた人だ。
思い出した途端に笑い出しそうになって、咄嗟に顔を伏せようとしたのに間に合わず。逸らす間もなく、彼が振り向いた。
またもや目が合ってしまって、非常に気まずい雰囲気。私は必死に笑いを堪えて、陳列棚へと目を逸らした。

