君と夢見るエクスプレス


本当に危なかったし、焦った。
彼のせいで、乗り過ごしてしまうところだった。



彼のせい、というよりも彼のことに気を取られて……と言うべきか。
まあいいや。



改札口へと向かいながら本をバッグへ押し込んで、代わりにパスケースを取り出す。バッグの内ポケットの中に引っ掛かってしまい、なかなか取り出せないでいると、ぽんっと肩を叩かれた。



「おはよ、陽香里」



振り返るよりも先に美波の声が聴こえて、ほっとさせられる。このタイミングで橘さんが現れたら、どうしようかと思っていたところだったから。



「美波、おはよう」



美波の顔を見たら安心したのか、するりとパスケースが出てきた。



だけど乗り過ごしそうになったことを美波に話すのは、ちょっと恥ずかしい。昨日の橘さんのことをネタにしてる場合じゃない。



そのまま改札口を出て、美波と一緒に駅前のコンビニへ直行。



お菓子の陳列棚を一回りしていると、見たことのないグミを発見。パッケージには『コラーゲンたっぷり』と大きく書いてあるし、これは迷わず買いでしょう。



私が手を伸ばすと、美波も手を伸ばした。