「何言ってんのよ、訳がわからない」
なんだか豹変ぶりが気持ち悪くて、目を逸らした。烏龍茶のグラスに手を伸ばして知らんぷり。
それなのに、視界の端に彼の顔が映っててる。私の様子を窺うつもりなのか。
早く、元居た席に戻りなさいよ。
「松浦さんって、彼氏いるの?」
「そんなこと、橘さんには関係ないでしょ? それ、セクハラだよ?」
「やっぱりいないんだ」
「やっぱり、って何なの? 失礼なことばかり言わないでよ」
力いっぱい言い返した。
気持ちを込めて。
本当に腹が立つ。
今朝のことにしろ、今にしろ、橘さんはもはや私にとって嫌な人でしかない。
普通、女の子にそんな質問する?
しかも宴席でするなんて、あり得ない。
今朝のことを、ここで暴露してやろうかしら?
そうつけ加えようと振り向いたら、橘さんの神妙な横顔。左手で握り締めたグラスを、じっと見つめている。
ついに眠くなったのか、酔っ払い。
すると、彼が振り向いた。
心の声が聴こえてしまったのか?
気持ち悪くなって、とっさに身構える。

