君と夢見るエクスプレス


最初から彼は、卒業後は留学するものと決めていたのだろうか。それとも、就職活動に失敗して挫折を知って……
仕方なく留学を選んだ?



「松浦さんはすぐに就職したんだよね? 留学とか考えたことなかったの?」



質問の矛先が、私へと向けられる。もう四年目だというのに、入社当時のような質問をされるだなんて思わなかった。
正直なところ、やめてほしい。



「私? 私は留学なんて考えたことありませんよ。ここに就職するんだって決めてましたから」
「そうそう、松浦さんはすごく一図な気持ちで就職したんだよね」
「小学生の時の夢が、電車の運転士だったっけ?」
「子供らしくて、いい夢だ。だけど、女の子らしくないぞ」
「見た目は思いっきり女の子なのになあ」



先輩たちが、私をネタにして笑ってる。
どうして覚えてるのよ……



四月に企画開発室に異動して来た時の歓迎会で、ぽろりと零してしまっただけなのに。そんなつまらない事は早く忘れてほしい。



たぶん、これからもずっと、事あるごとに言われ続けるんだろうなあ……
悲しいかな。
もはや、私の伝説になってしまってる。