まったく、動物の喧嘩じゃないんだから。どうせ、約束が……とか言いたいのだろう。
面倒くさい男だ。
グラスを仰いで息を吐いて見せたら、彼が視線を逸らした。
笠子主任と談笑していた阪井室長が、彼の肩に手を載せて話している。照れ臭そうに彼がぺこりと頭を下げると、阪井室長は皆を見渡して手を叩いた。
「皆さん、酔いが回らないうちに自己紹介をしておきましょう。まずは橘君から簡単に」
盛大な拍手に背中を押されて、彼が立ち上がる。
「橘航です、今日はこのような会を開いて頂き、本当にありがとうございます。皆さんの力になれるよう頑張っていきますのでよろしくお願いします」
「橘君はいくつだったかな? 二十五?」
深々と頭を下げる彼の脚を突っついて、阪井室長が返事を急かす。そうしながら、もう片方の手で掴んだグラスを仰いだ。
「いいえ、二十六です」
「そうか、二十六なら松浦さんと同じ年になるんじゃないか?」
と言って、阪井室長が私を指さすから首を振った。
「私はまだ二十五です」
「おお、そうか。悪かった悪かった」
両手を合わせて笑顔で謝る阪井室長の隣で、彼がにやりと笑ってる。
なんだか、嫌な感じ。

