君と夢見るエクスプレス


阪井室長の長い挨拶に、皆が痺れを切らしていた。握り締めたグラスの中で、ビールの泡がぷつぷつと消えていく。



早くしないとヌルくなっちゃう……



ついには何を話してるのかわからなくなってきた頃、「乾杯!」と阪井室長の弾むような声が響いた。
皆が安堵の表情で、グラスを合わせる。



企画開発室のメンバーのうち、歓迎会に参加したのは約半数の八人。女子は私だけ。出席率が悪いのは月曜日だから。



私は一番端の出入り口に近い席に座った。もちろん上座に居る橘さんから一番遠い席だ。橘さんの隣には阪井室長と笠子主任が居て、終始笑顔。



「松浦さん、これも食べなよ。美味しいから」



隣に座ってる姫野さんが置いてくれた皿には、海老コロッケ。海老づくしコース以外のメニューを頼んだらしい。



「ありがとうございます、姫野さんも一緒に食べませんか?」
「いや、いいから食べなよ。俺は飲む方だから」



と言いながら、姫野さんはひとりでビールを注いでいる。



「私がします……」



慌てて伸ばした手の上に、姫野さんの手が重なった。私を制止するように。